skip to Main Content
Decision Resources Group Japan Branch

プライマリケアを再構築しようとする米国の小売大手

プライマリケアを再構築しようとする米国の小売大手

米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。CVSやウォルグリーンといった米国の小売大手が、保険会社と組んで医療提供の再構築を図っています。

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

広がる業務提携や事業開発

CVS-エトナ、ウォルグリーン、ウォルマートといったドラッグストア事業を手掛ける小売大手が、ブルークロス・ブルーシールドやヒューマナなどの保険会社とともに、医療に関する患者の意思決定をめぐって争いを繰り広げている。小売のオンライン化が進む中、こうした患者は実店舗型ビジネスの健全な経営を維持する上で欠かすことはできない。この1年、コンビニエンス・ケアの分野では、業務提携や新たな事業開発が急速に広がっている。

最近の動きとして、ウォルマートは保険子会社を立ち上げてプロバイダー(医療提供者)とペイヤー(支払者)を兼ねた事業体になることを計画。ウォルグリーンは、バリューベースケアに特化したプライマリケアを提供する人材派遣会社ビレッジMDと資本業務提携し、向こう5年で700のプライマリケアクリニックを店舗に開設する予定だ。

ウォルグリーンはヒューストンの5つの店舗でクリニックを実験的に運営しており、服薬アドヒアランスの向上や転帰の改善、患者満足度の向上といった効果が見られた。こうした要素はどれも、バリューベースの医療費支払い制度で成功するのに不可欠で、ウォルグリーンは10億ドルを投資してクリニック併設の店舗を増やしていく方針だ。

ウォルマートが保険子会社を立ち上げることを決めたのは、医療費が高額な患者の治療を管理するスペシャリティ薬局事業の延長線上にあり、ヘルスケアサービスのスーパーセンターを拡大させる同社の計画に沿ったものだ。ウォルマートはジョージア州で4つのクリニックを展開しており、緊急医療、歯科医療、行動医療、プライマリケアを提供する巨大なワンストップショップとして機能している。これにより、ウォルマートは競合より低価格で治療を提供できる購買力をつけた。

ウォルグリーンがビレッジMDと業務提携する一方、CVS-エトナは大型店舗「ヘルスハブ」の展開を進めている。睡眠時無呼吸症候群や糖尿病といった慢性疾患を管理する専用のサービスやサポートを提供し(将来的には、腎臓病などのより深刻な疾患まで提供範囲を広げることを目指している)、呼吸療法士や栄養士も常駐させている。同社は2021年末までに1500のヘルスハブをオープンさせる予定だ。

ウォルグリーンは、CVS-エトナのヘルスハブとは決定的に異なる新事業を打ち出している。何が違うのかというと、医師についてだ。これまで、ウォルグリーンのヘルスケアクリニックとCVSのミニッツクリニックは、統合医療ネットワーク(IDN)のプライマリケア医と提携し、協力関係にある特定の看護師を配置してきた。しかし、両社のモデルは徐々に方向性が分かれ、CVSがIDN加入者との提携を重視したのに対し、ウォルグリーンはVanderbilt Health(ナッシュビル)やAdvocate Health Care(シカゴ)といった意欲的なIDNに所有権を含む全事業を売却した。

ヘルスハブを推し進めるCVSの勢いに押されたのか、ウォルグリーンは2019年末、自社で所有するすべてのクリニックを閉鎖すると発表した(IDN所有の約400のクリニックは存続)。こうしたクリニックが消失したことで、ウォルグリーンは、患者中心のメディカルホームモデルの重要な構成要素である医師へと主眼を移している。

 

医師を常駐させることの意味

医師との統合によって、小売業者はこれまで以上に治療の提供を掌握することになる。これは、保険会社との交渉を有利にするポイントだ。支払い交渉に長けた小売業者ほどインストアクリニックモデルが成功する可能性は高い。ドラッグストアも患者の利益を第一に掲げているが、ドラッグストアがあくまで「リテール医療企業」であるのに対し、ウォルマートは「完全なる医療企業」を目指すことを明らかにしている。

店舗に医師を常駐させるウォルグリーンのモデルは、次のような理由で患者の転帰を向上させる可能性がある。

・治療の継続性…従来のリテールクリニックモデルでは、患者はクリニックを出て別の場所に移動し、医師による診断や治療を受けなければならない。こうしたプロセスによって、適切な対応ができない場合がある。店舗に医師が常駐していれば、その場で治療が受けられ、処方箋の発行や提携IDNへの紹介も可能となる。

・投薬管理…医師常駐モデルでは、薬剤師と医師主導のケアマネジメントチームの中核に置いている。こうした協調システムによって、患者は薬物相互作用や服薬アドヒアランスについて個別のアドバイスを受けることができる。

・慢性疾患管理…リテールクリニックは慢性疾患の管理を重視する。しかし、現場の医師はメディケア集団で多く見られる複雑な慢性疾患や併存疾患を扱うため、各専門職よりも高い技量を備えている場合もある。慢性疾患の管理をしっかり行うことは、保険会社とメディケアアドバンテージの低価格プランで提携することにつながる。

ウォルグリーンがこうした戦略を展開しているのに対し、CVSのヘルスハブはエトナの加入者に安い自己負担金やクーポンで利用を促し、統合された保険会社から利益を得る仕組みを構築した。この垂直統合により、請求データを利用して患者のメトリックスを分析したり、患者特有のケアプロトコールを導入したりして、エトナの総経費を削減することができる。

CVSのヘルスハブはまだ初期段階だ。しかし、このヘルスケア業界の大手企業が、特に高血圧や糖尿病といった疾患に対するデジタル分析や、在宅での遠隔モニタリングを通じて、全住民の健康管理を向上させる可能性を秘めていることに注目したい。2019年、CVSは遠隔モニタリングを含む自宅透析システムの臨床試験を実施した。CVSはいずれ、十分な医療サービスを受けられていないと考えられる地域に医師を常駐させることを検討するだろう。

 

激しさ増す競争

CVS-エトナのヘルスハブ以外にも、保険会社が運営するクリニックが勢いを増している。ヒューストンは、全米でトレンドとなっている保険会社と医療機関が融合した施設の実験場となっている。テキサス州の市場は、CVSのヘルスハブを生んだほか、ヒューマナの高齢者向けヘルスケアセンターの拠点として、さらにはブルークロス・ブルーシールドとサニータス社メディカルセンターが共同で設立した10の医療センターの新拠点として選ばれた。多国籍保険会社であり、Florida Blueの親会社であるGuidewellとKeraltyとの合弁会社であるサニータスは、2020年、テネシー州のBlue planとの提携にも署名した。

保険会社が運営するこうしたクリニックは、ウォルマートのクリニックと同様に、診断、緊急医療、プライマリケアを目的としたワンストップショップとして経営されている。ヒューマナのクリニックは、社会的サービスと行動医療を重視し、患者と医師の面談時間をしっかり取るなどして、メディケアアドバンテージ加入者の治療に重点を置いている。こうした保険会社は、ウォルグリーンやCVS-エトナの成長に伴い、クリニック事業を強化していく可能性がある。

小売店舗内の薬局でより幅広い業務を展開することは、価値に見合った支払いに国全体が以降していることや、消費者がネット通販を好む傾向にあることなど、複数の要因によって後押しされている。こうした傾向により、患者への治療提供に対する共同事業やイノベーションの必要性が高まっている。ウォルマート、ウォルグリーン、CVS-エトナはこうしたモデルに投資する中心的な存在であり、ケアマネジメントに大きな影響を及ぼす立場にいる。

(原文公開日:2020年8月4日)

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。本記事の原文はこちらです。

AnswersNewsは、「製薬業界で話題のニュースがよくわかる」をコンセプトに、製薬業界に関するさまざまなニュースをわかりやすく解説するニュースメディアです。


Back To Top
×Close search
Search