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Decision Resources Group Japan Branch

「テクフィデラ」特許無効判決で多発性硬化症治療薬市場はどうなる?

「テクフィデラ」特許無効判決で多発性硬化症治療薬市場はどうなる?

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。世界で40億ドルあまりを売り上げる米バイオジェンの最主力品「テクフィデラ」をめぐり、米国の裁判所が特許を無効とする判決を出しました。後発医薬品参入の見通しと、今後の市場の展望は。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

訴訟の経緯と今後のスケジュール

2017年3月22日:
バイオジェンが、Inter Partes Review(IPR=当事者系レビュー)でCoalition for Affordable Drugs(CFAD=適正価格の薬品を求める連合)に対して’514特許の正当性を主張。

2917年3月27日:
マイランを含む29社が後発医薬品を申請し、第一申請者の資格を得る。

2018年:
最初の後発品が暫定的承認を取得。これまでに13社以上が暫定的承認を取得している。

2020年2月5日:
バイオジェンがIPR手続きでマイランに対して’514特許の正当性を主張。

2020年6月18日:
ウエストバージニア州地裁で、’514特許に対するマイランの異議申し立てが認められる。バイオジェンは上訴。

2020年6月30日:
バイオジェンが、訴訟の進行中はマイランが後発品を発売しないよう、販売差し止め命令を申請。

2020年第3四半期~第4四半期:
第一申請者18社を含む後発品メーカーが起こした別の訴訟で、デラウェア州地裁が判決を出す見込み。バイオジェンが敗訴し、上訴する可能性が高い。

2020年11月16日まで:
マイランなど第一申請者の後発品をFDA(食品医薬品局)が正式承認の見込み。at-risk generic launch(特許訴訟を抱えた後発品の発売)の可能性も。

2021年第3四半期~第4四半期:
バイオジェンの上訴に対する判決が見込まれる。敗訴すれば後発品が参入する見通し。

 

後発品参入の見通し

Decision Resources Groupでは、バイオジェンが求めている後発品販売差し止め命令は認められるものの、最終的には後発品メーカーが勝訴し、2021年後半には「テクフィデラ」に後発品が参入すると予測している。

ただ、それより早く後発品が参入する可能性もある。バイオジェンの販売差し止め請求が認められなければ、後発品メーカーは特許訴訟を抱えたまま20年中に販売に踏み切るかもしれない。そうなれば、20~21年の多発性硬化症治療薬市場の売り上げに影響を及ぼすと考えられるが、長期的に見れば発売が1年程度早まったところで結果は大きく変わらないと考えられる。

テクフィデラの後発品によって最も大きな影響を受けるのは、同じクラスの製品や早期ラインの代替薬であると予想される。

可能性としては低いが、バイオジェンの販売差し止め請求が認められ、係争中の特許訴訟で勝訴すれば、テクフィデラが2028年まで特許による保護を保持することになる。しかし、バイオジェンは複数の後発品メーカーとすでに和解しており、28年より前に後発品が参入する可能性はある。

28年にテクフィデラの後発品が参入するシナリオでは、ノバルティスが係争中の「ジレニア」(特許満了は2027年)の特許訴訟に勝訴すると仮定した場合、米国で最初に経口疾患修飾薬(DMT)の後発品が参入するのは、23年の「Aubagio」(サノフィ)と予想される。ジレニアの特許訴訟は年内に判決が出される見込みだ。

 

市場の展望

2019年にDecision Resources Groupが行った調査によると、米国の保険者は同クラスのほかの薬剤(バイオジェンの「Vumerity」など)よりもテクフィデラの後発品を優先的に使用するよう求める可能性が高く、ほかのクラスへの影響は比較的小さいと考えられる。

現時点では、保険者は多発性硬化症である程度の処方の自由を認めており(単独で最適な治療アルゴリズムがないことも理由の1つ)、テクフィデラの後発品によってこの状況が変わることはないと予想される。

しかし、Decision Resources Groupが調査した米国の神経科医らは、患者の費用負担を軽減する観点から、早期ラインでテクフィデラの後発品がよく使われるようになるだろうと述べている。多くの神経科医は、患者側も自己負担を少なくするために後発品を求めるのではないかと予想している。

テクフィデラの後発品の発売が2028年まで遅れた場合、Vumerityが最初に推奨されるフマル酸塩となり、クラスリーダーとして徐々にテクフィデラと入れ替っていくことになる。Vumerityの米国売上高は30億ドル以上になる可能性がある。一方、テクフィデラの後発品が早い段階で参入すれば、Vumerityの使用は主に消化管の副作用でテクフィデラが使えない患者に限られ、28年の売上高は10億ドルに届かない見込みだ。

テクフィデラは、確かな臨床プロファイルの裏付けによって早期ラインで推奨され、現在では患者シェアトップの疾患修飾薬となっている。Decision Resources Groupの調査をもとに考えると、テクフィデラの後発品は多発性硬化症治療で推奨されるファーストラインの疾患修飾薬となり、早期ラインで使われるほかの薬剤、すなわち、注射剤(インターフェロンβやグラチラマー酢酸塩)、Aubagio、S1Pモジュレータ(ジレニアや「Zeposia」)からシェアを奪うと考えられる。

ただし、多発性硬化症の複雑性を考慮すると、これらのクラスも引き続き重要な薬剤として位置付けを保つだろう。加えて、テクフィデラの後発品が抗体医薬や進行性の患者に使用される薬剤(二次性進行型多発性硬化症に対する「Mayzent」など)に及ぼす影響は極めて小さいと予想される。

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。この記事の元となった当社のレポート「Multiple sclerosis – Disease Landscape & Forecast」に関するお問い合わせはこちら。

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