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安全性への懸念とCOVID-19の影響は?欧州における乳房インプラント市場

安全性への懸念とCOVID-19の影響は?欧州における乳房インプラント市場

この記事は、弊社が発行したレポート「Breast Implant | Europe | 2020」のExecutive Summaryを翻訳したものです。レポートに関するお問い合わせはこちら。

ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)および乳房再建デバイス市場は、マクロテクスチャードタイプのインプラントの安全性とブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)発症に対する懸念の高まりを受け、近年縮小しています。それまで市場首位であったアラガンのテクスチャードタイプのインプラントは欧州市場での販売が停止され、フランスでは数製品の使用が禁止されました。

新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行を受け、緊急性のない手術は延期または中止となっているため、予測期間の初期には市場の低迷が続きそうです。それでも、インプラントおよび再建術に対する需要は持続し、新たな技術も生み出されていることから、COVID-19を巡る状況が改善すれば手術総数は元の水準に回復し、最終的には収益成長が見込めそうです。

新型コロナウイルスCOVID-19を巡る世界的な状況は現在も急速に変化しているため、これが美容外科領域をはじめ、多様な医療機器市場に与える影響の全体像を確認するのは依然困難ですが、現時点での情報と業界関係者から得た当初の情報に基づきCOVID-19流行の影響を市場モデルに加味しました。

当面、豊胸術および乳房再建術を含む待機的手術数の大幅な減少が予想されます。数か国および一部の地方自治体では、感染拡大防止のため住民に対する外出禁止令が出され、豊胸術、再建術など絶対に必要とはいえない手術は延期または中止されています。

さらに経済的視点からもCOVID-19の影響は無視できません。失業や雇用の先行きが不透明な場合、多くの人々は医療費の自己負担、特に豊胸術などの美容整形術の費用を避けようとするでしょう。そのため、2020年には手術数、売上数および収益は激減しそうです。

欧州では、がん治療は急を要する必要な治療とみなされるため、乳房切除術および腫瘍摘出術数は維持されそうですが、それでも手術数に影響する要因がいくつか考えられます。

まず、定期的スクリーニングまたは医師による検診の延期や中止によって乳がんの診断に遅れが生じる可能性があります。これを受け、乳房切除術、乳房再建術数も減少する可能性があります。さらに、乳がん家族歴がある、またはBRCA1またはBRCA2 遺伝子変異を有するなど、乳がん発症リスクの高い女性に推奨される、あるいはこうした女性の希望により実施される予防的乳房切除術も、急を要するとはみなされないため延期される可能性があります。この場合も乳房切除術、その後に実施される乳房再建術の数が限定される可能性があります。

回復すれば、欧州のブレスト・インプラントおよび再建デバイス市場を支える主な原動力は豊胸術で、インプラント販売数の80%を占めそうです。欧州では乳がん罹患率の微増に伴い乳がん手術数も増えることが予想されるものの(Breast Cancer. Decision Resources Group. Epidemiology, 2018)、術後にインプラント術を選択する患者の割合は比較的少ないのが現状です。このため、乳がん患者の増加がインプラントおよび再建デバイス市場に与える影響は限定的であると思われます。

当市場では今後もインプラントに関連した安全性の懸念が残りそうです。BIA-ALCLの症例報告が増加したため、昨年はテクスチャードインプラント数製品の自主回収が行われました。フランスの医薬品規制当局ANSMは、アラガン、GC Aesthetics、Laboratoires SEBBIN、Laboratoires ARION、POLYTECH Health & Aesthetics社製のテクスチャード加工およびポリウレタンコーティングの施されたインプラントを禁止しました(ANSM, 2019年4月4日付プレスリリース)。これが当市場の規模縮小につながった最も重要な要因のひとつです。

しかしながら、多くの企業はこれらの課題に対応した製品イノベーションに積極的に取り組んでいます。さらにMDR(医療機器規則)の導入によって、欧州全域でより高水準かつ一貫性のあるデバイスの品質基準が保証されそうです。

2019年、当市場の首位に就いたのはMentorでした。市場総売上高の過半を占め、圧倒的な強さを示しました。同社は製品イノベーションへの取り組みは積極的とは言えないものの、製品は依然人気が高く医師及び患者からの高い評価を維持しています。全シリコンインプラントに長期保証を提供し、製品の安全性に対する信頼を高めています。同社はマイクロテクスチャードおよびスムーズシリコンインプラントのトップメーカーです。

他社のマクロテクスチャードインプラント製品自主回収により、欧州の大半の地域でマイクロテクスチャードまたはスムーズインプラントへ切り替える医師が増えたことで、市場シェアを大きく伸ばしました。

Mentorの市場シェア拡大は、それまでの市場首位アラガンが大きな打撃を受けたことによるものです。2018年12月、アラガンのテクスチャードインプラントとティッシュ・エキスパンダー製品に対するCEマークは更新されず、これを受けて同社は欧州での当該製品の販売を停止し、全製品の自主回収を行いました。これらの製品とBIA-ALCL発症の関連性が指摘され、マイナスイメージが強まりました。

同社のスムーズインプラントは自主回収の影響を受けてはいないものの、欧州での販売数はごくわずかです。その結果、2019年、アラガンは市場シェアの大半を失い、当市場での収益はごくわずかな水準にとどまっています。

2019年4月、BIA-ALCL発症との関連が最も強いとされる表面構造のインプラント使用リスクを軽減するため、ANSMは予防的措置として、GC Aesthetics、Laboratoires SEBBIN、Laboratoires ARION、POLYTECH Health & Aesthetics社製のマクロテクスチャードおよびポリウレタンコーティングを施したインプラント製品もフランス市場から除外する決定を発表しました(ANSM, 2019年4月4日付プレスリリース)。

この決定を受け、これらの企業の収益は落ち込んだものの、その他の表面性状の製品を含む多様なポートフォリオを有していることが損失額の軽減に役立ったと言えます。一方、MentorおよびEstablishment Labsなどの企業はいずれもマクロテクスチャードインプラントを製造していないため、製品回収の対象とはならず、市場シェアの拡大を果たしました。

GC Aestheticsは、フランスでマクロテクスチャードインプラントNagorおよびEurosiliconeブランド製品のリコールを行ったものの、市場全体での地位を維持しています。これはマイクロテクスチャード製品など、安全性を高めた製品開発への取り組み、デバイスの使用を裏付ける肯定的な臨床データによるもので、リコールが同社のシェアに与える影響を軽減しました。さらに同社は、PIPインプラントが破裂した場合、無料交換を行うなど医師と患者の間で肯定的なブランドイメージを確立してきました。

Laboratoires SEBBINは、胸部形状の左右差の補正に役立つカスタムメイドの3-Dシリコンインプラントの開発に焦点を置くAnatomikModelingと提携しています。3-Dシリコンインプラントは、欧州市場に参入すれば相当の使用が予想されていることから、Laboratoires SEBBINはシェア拡大に有利な立場にあると言えます。ただし、フランスでのマクロテクスチャードインプラント禁止の影響を受け、前述の数社と同様、シェアは一時的にやや落ち込みそうです。

コスタリカに本社を置くEstablishment Labsは、2016年以来EU域内に7つの子会社を設立し、欧州でのプレゼンスを強化しています(Establishment Labs, 2019)。子会社を通じ、製品の販売・流通能力を改善し、欧州市場へのさらなる浸透、シェア拡大を実現しました。

Mentor同様、Establishment Labsはマクロテクスチャードインプラントのリコールの影響を受けることなく域内各地でのシェアを伸ばしています。同社のMotivaインプラントはマイクロテクスチャード加工で、欧州ほぼ全域でのマクロテクスチャード製品からのシフトが好機となりました。同社はMotivaインプラントに関し、フォローアップ期間を10年間とする臨床試験を開始しました。望ましい結果が得られれば、同社の地位はさらに確実なものとなるでしょう。ただし、この試験はまだ被験者募集段階にあり、COVID-19大流行による遅れが予想されます。このため患者募集と埋込術実施に影響が出そうです

概して、欧州市場ではMDRの下、医療機器承認プロセスが次第に厳格化しつつあります。このため当市場への製品投入がさらに困難となる可能性もあります。

COVID-19を巡る世界的な状況は急速に変化しているため、市場に与える影響の全体像を確認するのは依然困難です。それでも患者は絶対に必要とはいえない手術を見合わせたり延期したりしていること、医療機関はCOVID-19の診断と治療を優先していることからブレスト・インプラントおよび再建術デバイス市場が打撃を受けることは間違いありません。

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この記事は、弊社が発行したレポート「Breast Implant | Europe | 2020」のExecutive Summaryを翻訳したものです。レポートに関するお問い合わせはこちら。


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