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Decision Resources Group Japan Branch

AIとデジタルプラットフォームが牽引する「バリューベースの医療」

AIとデジタルプラットフォームが牽引する「バリューベースの医療」

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、AIやデジタルプラットフォームを活用し、バリューベースの医療を推進する米国の薬剤給付管理会社や保険会社の動きをレポートします。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

PBMがプログラムを拡充

ここ最近、CVSヘルスはがん領域、エクスプレス・スクリプツは心血管疾患で、それぞれバリューベースのケアプログラムを拡充している。両社が目指しているのは、患者の転帰の改善と高額な治療費の削減だ。公衆衛生の向上と経費の抑制に向けて治療へのアドヒアランスを確保するには、患者データにシームレスにアクセスできる人工知能(AI)や予測分析といった新技術の導入が極めて重要になると、PBM(薬剤給付管理会社)や保険会社は考えている。

CVSは2019年12月12日、ゲノム分析の活用によって個々の患者に最適な治療を提供する「Transform Oncology Care(がん治療を転換する)プログラム」を開始した。これは、プレシジョン・メディシンに的を絞ったテクノロジー企業であるTempusとの提携によるものだ。患者は幅広い遺伝子検査を利用でき、医療者はこの検査結果をもとに最適な治療レジメンを決定できるため、がんの進行の抑制と治療コストの削減につながる。

CVSは同じ年の7月30日、糖尿病の早期発見と予防、そして糖尿病と合併することの多い高血圧の管理に重点を置いた「Transform Diabetes Care(糖尿病治療を転換する)プログラム」の拡張も行っている。同プログラムは、2017年の開始から6カ月間でHbA1c(ヘモグロビンA1c)を平均1.2%改善するという成功を収めたほか、糖尿病の管理が不良だった患者の半数超で管理状態となった。拡張後のプログラムでは、自社のHealth Engagement Engine分析プラットフォームを活用し、プログラムの恩恵を受けやすい高リスクな加入者を見極める。

 

がんや糖尿病などが対象

エクスプレス・スクリプツは、「Cardiovascular Care Valueプログラム」を導入し、同社のバリューベース・ケアプログラムである「SafeGuardRx Cholesterol Care Value」を拡充した。このプログラムを通して同社は、PCSK9阻害薬と特定の抗凝固薬について値引きや上限額を設定。さらに、SafeGuardRxSMプラットフォームの患者データを予測的に分析した上で、リスクのある患者やアドヒアランス不良の患者に働きかけ、早期介入につなげようとしている。

2020年3月には、同じSafeGuardRxプラットフォームを使用するHIV Care Valueプログラムも開設した。このプラットフォームを利用する医療プランの支出を管理することもできる。

エクスプレス・スクリプツは特に、糖尿病、がん、C型肝炎、多発性硬化症などの治療分野に対応しており、同社のプログラムはSafeGuardRxの支援を受けることでポジティブな結果を出している。例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息の患者の吸入剤の使用は72%低下し、プランに出資するほぼ800社の医薬品支出が19%減少した。

 

早期介入に軸足

PBMがバリューベース・プログラムに携わるという展開は注目を集めている。がん、糖尿病、心血管疾患、自己免疫疾患という複合的な疾患の治療にかかる費用の高騰を防ごうと、早期の介入を通じた予防に軸足を移しているとみられるからだ。

最近のPBMと保険会社の合併で、大量の患者データが統合されていることも大きい。ケアの提供モデルが治療から予防に向かってシフトするにつれて、保険会社がAIや予測分析に寄せる期待は膨らんでいる。手元にあるビッグデータから有効な分析結果を引き出し、マネジメント・プログラムのカスタマイズに役立てることを想定しているのだ。

これにより、プログラムの支援を受けた医療プロバイダーが、保険会社にとって最も高くつく薬剤(がん、糖尿病、炎症性疾患、高コレステロール血症)について、最適かつ効果的な治療選択肢を処方できるようになる。プログラムにバリューベースの支払い戦略を導入すれば、アドヒアランスが向上し、不要なコストを削減できると考えられる。

 

コスト削減に期待

CVSのTransform Diabetesプログラムが、リスクのある加入者を高度な分析プラットフォームで検出し、オプションへの登録を働きかけることがその一例だ。継続的なモニタリングのため加入者はデジタルスケールを渡され、アプリケーションで1年ごとに糖尿病予防教育を受けられるようになる。ライフスタイルの管理とアドヒアランスの向上によってHbA1cをコントロールできれば、健康状態が改善する上、医療費の大幅な削減も可能になることが、これまでの研究で示されている。

リアルタイムデータの活用によって慢性疾患の高額な経費を削減するという手法は、保険会社からますます大きな期待を集めるようになっている。これを受けて、PBMは今後も分析論に力を入れ、バリューベース・プログラムの開発を進めるだろう。分析で得た洞察を掘り下げるべく、大手PBMに合流するPBMも出てきている。例を挙げれば、OptumRxは行動経済学の原理を活用し、加入者にウェルネスプログラムへの積極的関与を促している。

影響力を増すPBMは、医療コストの管理者として、またバリューベース・プログラムの立役者として極めて重要な役割を担う。データ分析力があり全国的に大規模な事業基盤を築いているPBMは、バリューベース・プログラムを強力に推進していくだろう。

(原文公開日:2020年4月13日)

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。本記事の原文はこちらです。

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