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欧州における画像診断システム市場 – 多様化する企業戦略

欧州における画像診断システム市場 – 多様化する企業戦略

欧州の画像診断システム市場の原動力として2つの人口動態的特徴が挙げられます。一つ目は高齢化です。ドイツとイタリアでは65歳以上の年齢層が人口の21%以上、フランス、スペイン、英国でも18%以上を占めています(世界銀行、2018)。二つ目は肥満です。欧州における肥満の有病率は米国ほどではないものの、肥満人口も増加傾向にあり、ドイツと英国では人口のほぼ25%が肥満と分類されています(経済協力開発機構(OECD)、2017)。

この2つの要因が健康問題の増加につながり、ひいてはMRI、CT、超音波検査セグメントでの画像診断実施数が増加しそうです。

欧州の医療施設は、先の緊縮政策が画像診断システムへの投資へ深刻なインパクトを与えたため、既に導入されている装置の年数が史上最高に達しましたが、しだいに回復しつつあります。

MRI、CT、PETシステム全体のほぼ50%が6年以上の製品で、10年を超えるものが約20%を占めています(COCIR: European Coordination Committee of the Radiological, Electromedical and Healthcare IT Industry(欧州放射線医用電子機器産業連合会)、2019)。

このため、欧州ではシステムの大部分がかなりの診断能力を失い、画質が低下し、作動速度も遅く、サイズや安全性、作動音などの技術的改善が求められています。

超音波および一般X線撮影装置の製造コストは比較的低いため、中国のベンダーなど小規模かつ低コストの企業には、これらのセグメントは魅力的な選択肢となっています。特に、米・欧・日本の大規模なOEM数社は、中国および韓国のベンダーと提携し、これらの企業の超音波トランスデューサ、DRパネルまたは画像処理ソフトウェアなどのシステムコンポーネントを自社システムに取り込もうとしています。さらに中国、韓国製品の欧州浸透が進むにつれ平均販売価格にもマイナス影響が生じています。

欧州各国政府および医療施設は、効率改善(スキャン時間の短縮、放射線被ばく量の低減、質の高い結果)及びコスト管理の可能性を見込んで医用画像技術におけるAIに投資しています。ただ、AIのイノベーションと統合によって施設は既存のインフラを用いて医療上の要求に対応できるため、短期的には新たなハイエンド画像システムの採用にマイナス影響が生じそうです。

2019年、欧州の画像診断システム市場で上位を占めたのはGEヘルスケア、シーメンスヘルスケア、フィリップスヘルスケア、キャノンメディカルシステムズなどのマルチモダリティベンダーでした。

イメージング機器が多岐にわたる中、これらの企業は病院の多様なニーズに応えることができ、バンドル割引を提供し、顧客に最大限のコスト削減を提案しました。さらに大規模なマルチモダリティベンダーは、ブランドが広く認められ、信頼性に対する比較的高い評価を得て、優位な立場にあります。消費者は耐久性と信頼性を強く求めるようになっているため、これは大きな強みです。

当市場における主力企業の多くとは異なり、GEヘルスケアは2017年以来欧州で新たなシステムを発売しておらず、シェアの一部を他社に奪われた形となっています。それでも信頼できるベンダーとしての高い評価や、医師及び医療施設との既存の関係でプレゼンスを確立し、画像診断システム市場総合では首位を維持しています。さらに、CTシステムRevolutionシリーズの次世代機種Revolution Apexが2020年の発売予定で、これによって今後も堅調な伸びが予想されます。

このほか、GEヘルスケアは医用画像アプリケーションにおけるAI技術開発にも投資しています。その一例が、富士通オーストラリアとの提携によるCTを用いた脳動脈瘤の検知のためのAIアルゴリズム開発です。

他の画像診断機器メーカーとともに英国政府によるAIの開発・活用のため病理学・イメージングセンター設立のイニシアチブにも関与しています。さらに、同社は最近英国北部のBradford Teaching Hospitals NHS Foundation Trustと欧州初の病院「Command Center」建設で契約を締結し、AIアルゴリズムを用いて同市のBradford Royal Infirmary病院の資源配分の監視、改善を目指します(GE Healthcare, 2018年10月4日付プレスリリース)。

AIへの投資により、同社は当領域での先駆的存在として認められています。その一例が、欧州放射線学会(ESR: European Society of Radiology)と協力して、2019年欧州放射線学会議(ECR)で実施したAIイメージングアプリケーションに関する合同セッション、イベント、デモンストレーションです(InterventionalNews, 2018)。

既に述べた通り、GEヘルスケアは他社に比べ新たなシステムに欠けるものの、AI技術によって優れた画像再現性と既存システムの診断能力の強化が実現すれば、同社の画像診断機器ポートフォリオの売上成長につながりそうです。(医用イメージングアプリケーションにおけるAI市場の詳細な分析は、弊社の「画像診断における人工知能市場レポート」をご覧ください)

シーメンスヘルスケアは複数モダリティで製品を発売し、医療提供者との提携で売上と製品の認知度を高め、当市場での地位を維持しています。その一例として、同社はスペインのExtremadura Health Serviceと10年間の技術パートナーシップ契約を結び、同地域の新たな大学病院University Hospital of Cáceresに画像診断機器を導入し、オンサイトサービス、テクニカルサポートを提供します(Siemens Healthineers、2019年1月15日付プレスリリース)。

同様に、英国のImaging Clinicとも提携し、すべてのセグメントを含む画像診断システムラインナップをImaging Clinicの子会社Incorporated Healthに関連する英国各地の複数の病院に提供します。(Siemens Healthineers、2019年7月22日付プレスリリース)

キャノンメディカルシステムズは、先の東芝メディカルシステムズの買収により、当市場において相当のシェアを獲得しました。

東芝メディカルシステムズの画像診断製品は世界中で非常に強い信頼を得ており、非常に高機能のシステム開発で知られています。この買収と製品の発売やアップグレードで、キャノンメディカルシステムズは欧州画像診断システム市場4位の座に就きました。

小規模の単一モダリティベンダーは概して、価格、ニッチセグメントまたは小規模でコスト意識の高い施設に対して成功を収めています。こうした企業はしばしば大企業よりも低価格でシステムを提供することが可能であるためです。

小規模施設は単一システムの購入を考える可能性が高く、大手ベンダーが提供するバンドルや数量割引の恩恵を受ける可能性は低いと言えます。さらに、これらの小規模ベンダーはイノベーションを重視する傾向にあり、これによって他社製品との差別化を図っています。

欧州では、中国および韓国のメーカーがしだいにプレゼンスを拡大しています。こうした企業の取り組みの多くは大規模な米、欧、日本のOEMとの提携を通じたものですが、サムスン、Mindray Medical International、Neusoft Medical Systemsなどは自社製品を通じて積極的に欧州市場への参入を推し進めています。

こうした企業は低い人件費、大量生産によるコスト削減の機会を生かすだけでなく、研究開発に投資し病院および病院以外の市場向けに製品開発を行う資本も持ち合わせています。こうした企業が欧州での事業能力の拡大を続け、ブランド資本を高めていけば、提供されるシステムの競争力が一層強まりそうです。

この記事は、弊社が発行したレポート「Diagnostic Imaging Systems – Europe 2019」のExecutive Summaryを翻訳したものです。同レポートでは、欧州5ヶ国の画像診断機器市場について2027年まで分析・予測しています。

CHECK!レポート詳細は以下をご参照ください。

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