skip to Main Content
Decision Resources Group Japan Branch

薬価透明化へ 情報開示の要求を強める米国の州政府

薬価透明化へ 情報開示の要求を強める米国の州政府

Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、薬価の透明性向上に向けた米国州政府の動きをまとめました。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

盛り上がる透明化の議論

米国の各州はここ数年、医薬品の価格決定過程の透明化にフォーカスした法案を着々と準備しており、一部の州ではすでに成立し、施行されている。いくつかの州では2019年中に新法が制定され、製薬企業も対応を迫られる。

この夏、薬価の透明性向上に向けた連邦レベルの政策に多くの変化があり、医薬品のコストとそれに伴う患者の経済的負担にどう向き合うのか、幅広い議論が行われた。議論のペースは、8月に連邦議会が休会に入ったあとも落ちることはなかった。

特筆すべきことしては、▽超党派による薬価に関する新たな連邦法案の提出▽病院の価格設定の透明性に関する規定▽テレビコマーシャルで医薬品の価格表示を義務付ける規則の実施差し止め――などが挙げられるが、これらはほんの一部に過ぎない。連邦レベルであまりに多くのことが起こっているので、州レベルで何が起きているかなど、つい忘れてしまうほどだ。

 

州政府の取り組みが先行

薬価の透明性向上をめぐっては、実は、連邦より州政府の方が先行している。各州は連邦政府が改革に失敗したポイントに手を打っているのだ。州の取り組みは基本的に、製薬企業が一定の基準を超えて薬価を引き上げるのを思いとどまらせること、患者の自己負担とともに州が負担するコストを削減することに重きを置いている。中には、薬価の引き上げについて、事前の通知を求める州もある。

州法を制定しているのは、バーモンド州(2016年)、カリフォルニア州(2017年)、ネバダ州(同)、コネチカット州(2018年)、オレゴン州(同)、コロラド州(2019年)、メイン州(同)、テキサス州(同)、ワシントン州(同)。薬価設定の開示を義務付ける機運は確実に高まっており、落ち着くことはなさそうだ。

National Academy for State Health Policy(州政府の医療政策に関する全米協会)によると、薬価の透明性に関連する法案が2019年だけで52件に提出されている(8月1日現在)。ただ、カリフォルニア州から始まった強硬な措置を追随する州は少ない。以下で詳しく説明する。

 

各州がモデルとするカリフォルニア州法

各州の法律は、▽どのようにして薬価の報告を促すのか▽どういった事業体に報告を義務付けるのか▽どのような情報を開示の対象とするのか――といった点で差が見られる。カリフォルニア州の法律は、ほかの州法のモデルとされることが多く、こうした命令の影響を把握する上で格好の材料となる。カリフォルニア州の報告規定は2019年1月1日に有効となった。

カリフォルニアでは、値引き前卸売価格にあたるWAC(wholesale acquisition cost)が治療1回あたり40ドルを超え、かつそのWACの引き上げ幅が直近2年間の累積分も含めて16%を超える場合、製薬企業は60日前に値上げの予定を州政府に報告しなければならない。その際、製薬企業は、値上げの理由を記載した陳述書を提出。一度でも16%という基準を上回れば、製薬企業は値上げの妥当性を証明する情報などを、3カ月ごとに州に報告する必要がある。

また、新薬のWACがメディケア・パートDのスペシャリティドラッグの基準(2019年は1カ月あたり670ドル)を上回る場合、発売から3日以内に州に通知しなければならず、追って30日以内に根拠となるデータを提出することも義務付けられている。こうした報告規定に従わない場合、医薬品ごとに1日1000ドルの制裁金が課せられることになる。

 

今年も4州が法を制定

この記事を書いたあとにいくつかの法案が通過する可能性はあるが、ほとんどの州で今年の定例議会は終了している。そこで、来年に向けてどれほどの透明性向上が期待できるのか、大局的に見てみたい。

2018年に州法を制定したオレゴン州は今年、カリフォルニアのような通知規定を追加し、法律を強化することを決めた。これは来年1月に発効する予定だ。コロラド州、メイン州、テキサス州、ワシントン州も今年、法律を成立させている。

コロラド州では、カリフォルニアよりも包括的な法律を制定しようとしたが、不首尾に終わった。ただ、医薬品を販売する際、処方者に直接書面で医薬品のWACを伝えることを製薬企業に義務付ける法律は成立した。この告知書面には、同じクラスのジェネリック薬の名称を3つ以上記載しなければならない。この法律は今年8月2日に発効した。

製薬企業から薬価データを収集するシステムを構築しようとしているメイン州は、こうした取り組みの下で州法を制定した。製薬企業は来年1月30日までに、再来年以降も年1回、前年のWACの値上げ幅が最小規格単位で20%を超えたブランド薬について、州に対して価格に関する一定の情報を提出することが義務付けられる。最小規格単位あたりの価格が10ドルを上回るジェネリック薬についても、同様の規定が設けられている。

さらに製薬企業は、新薬のWACがメディケア・パートDのスペシャリティドラッグの基準を上回る場合、州政府に報告する義務を負う。

 

価格への影響は未知数だが慎重な検討が必要

今年10月1日に新しい報告規定が発効するワシントン州も、カリフォルニアを手本としている。ただ、細かな点では異なる部分も多い。値上げの報告が必要となるWACの基準がその1つである。テキサス州の法律も細部には多くの違いがあるものの、カリフォルニアの州法の要素を取り入れ、強化している。法律が発効すると、テキサスの報告制度は来年1月1日にスタートする。

今後も、薬価の透明性向上に向けた法律を制定する州は増えるだろう。製薬企業は各州の規定に細心の注意を払わなければならない。各州の法律には共通する部分も多いが、報告規定の細部はかなり違う。報告義務に従わなかった場合、1日あたり数千ドルの民事制裁金が課されるのはこの種の州法に共通する特徴だ。一方、すべての州がカリフォルニアを手本としているわけでもコロラドに似ているわけでもなく、報告よりほかの規定を重視するところもある。

製薬企業の中には、カリフォルニア州法に従って引き上げの根拠となる情報を提出している企業もある。このような州法が薬価にどれほどの影響を及ぼすのかは未知数だが、価格戦略を策定する際は、各州の法律の規定を慎重に検討すべきだろう。

(原文公開日:2019年8月19日)

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。本記事の原文はこちらです。

AnswersNewsは、「製薬業界で話題のニュースがよくわかる」をコンセプトに、製薬業界に関するさまざまなニュースをわかりやすく解説するニュースメディアです。


Back To Top
×Close search
Search