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Decision Resources Group Japan Branch

巨額買収はアッヴィに何をもたらすのか

巨額買収はアッヴィに何をもたらすのか

Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。米アッヴィが先月、アイルランド・アラガンを630億ドルで買収すると発表しました。巨額買収はアッヴィに何をもたらすのでしょうか。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

「ヒュミラ」バイオシミラー参入によるリスクを低減

米アッヴィの長期的な成長戦略は、最終的にアイルランドのアラガンを買収するという形になった。この買収を通じ、美容医療を含む複数の疾患領域を新たに取り込むことで、アッヴィの成長規模は拡大し、収益性も向上する。

アッヴィは、「ヒュミラ」への依存をできる限り小さくするため、製品ラインアップを戦略的に多様化することを求められていた。買収により、バイオシミラー参入によるリスクを相対的に下げ、美容医療の分野で一流のブランドである「ボトックス」を手に入れる。アッヴィは長期的な研究開発資金の調達力を強化し、パイプラインの前進に重点的に取り組むことになる。

この買収はさらに、▽美容医療▽アイケア▽中枢神経系疾患▽消化器疾患――といった領域で急成長を見せるアラガンの製品ラインアップの価値を高め、アッヴィが全世界で商業的な存在感を高めるチャンスとなる。ボトックスや「Vraylar」といったアラガンのブロックバスターは、アッヴィの優れたマーケティング能力や世界各国に張り巡らされた販売網によって推進力を得るだろう。

 

中枢神経系領域や眼疾患領域を拡大

アッヴィは買収によって、規模も小さく成熟した自社の中枢神経系領域に新たなブランドを加えるとともに、眼疾患領域に強固な基盤を築くことになる。アッヴィのリチャード・ゴンザレスCEO(最高経営責任者)は「この買収では、アラガンのパイプラインをそれほど重視したわけではない」と述べた。しかし、アラガンは臨床開発の後期段階に幅広い資産(アセット)を持っている。これらは短・中期的に一定の収益が見込まれ、ヒュミラの売り上げ減を補うと考えられる。

アッヴィにとって中枢神経系領域は、極めて小規模な治療領域の1つ。「デパコート」や「ルボックス」といった成熟した製品が中心で、新しい製品といえばニッチ市場であるパーキンソン病の治療薬「デュオドーパ」くらい。パイプラインは開発初期段階のものが多く、アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷、進行性核上麻痺など、神経変性疾患としたものだ。革新的な疾患修飾治療に焦点を当てているが、開発のリスクも高い。

一方、アラガンの中枢神経系領域の製品ラインアップには、「Vraylar」「Saphris」「Viibryd」「Fetzima」「Namzaric」「ボトックス」などがあるほか、近い将来に発売が見込まれるものもあり、アッヴィのパイプラインが抱えているリスクを軽減する。

眼疾患領域におけるアッヴィの存在感は小さく(ヒュミラは非感染性後眼部ぶどう膜炎を対象に承認されている)、パイプラインもない。一方、アラガンは、現在使用されている治療薬を複数持っているし、近い将来、安定した収益源となり得る後期開発品もあり、この領域に確固たる基盤を築いている。

精神疾患:アラガンの製品とパイプラインで再構築

アッヴィの精神疾患領域は、デパコートやルボックスなどで構成される小さなものだが、アラガンのVraylar、Viibryd、Saphrisと、臨床開発の後期段階にある抗うつ薬rapastinelが、その基盤を再構築する。

Vraylarは、統合失調症と双極性障害の躁病エピソードや混合性エピソードの治療薬として承認されており、2019年5月には双極性うつ病への適応拡大がFDAからの承認が拡大された。Vraylarは現在、双極性障害に対して処方される薬剤の中で、最も適応が多い抗精神病薬となっている。

rapastinelは、大うつ病性障害を対象に行った臨床第3相(P3)試験に失敗したが、アラガンはその後も試験データの分析を続けている。rapastinelはN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を標的とする抗うつ薬。治療抵抗性うつ病の症状を速やかに改善すると期待されている。

既存の標準治療と比較すると、rapastinelは作用機序が異なり、副作用も軽い。アッヴィのアラガン買収によってrapastinelの開発方針が変わるかどうかはわからない。ライバルもおり、ヤンセンは今年3月、治療抵抗性うつ病に対してNMDA受容体拮抗型抗うつ点鼻薬Spravatoを発売している。

片頭痛:atogepantとubrogepant、27年までに25億ドル超を予測

アラガンは片頭痛領域の第一人者で、慢性片頭痛の予防薬としてボトックスが承認されている。ほかにも、2種類の経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬が後期開発段階にある。このうち、ubrogepantは片頭痛の急性期治療薬として申請中で、atogepantは片頭痛予防薬としてP3試験が行われています。

この2つの薬剤は、18年にスイス・ノバルティス/米アムジェン、米イーライリリー、イスラエル・テバから発売された3つの抗CGRP抗体とともに、市場拡大を牽引する。atogepantとubrogepantはいずれも経口剤で、片頭痛患者にとって利便性の高い選択肢になるだろう。ディシジョン・リソーシズ・グループは、アラガンの片頭痛治療薬の売り上げが27年までにアメリカで25億ドルを超えると予測しており、アッヴィの成長に大きく貢献すると考えられる。

神経疾患:シナジーがアッヴィのパイプラインをサポート

アッヴィは、再発性・進行性の多発性硬化症治療薬として、神経保護作用を持つ新たな抗RGMa抗体elezanumab(開発コード・ABT-555)を開発している。多発性硬化症の痙縮を対象にボトックスが承認されたことから、今後、多発性硬化症の専門家にも同薬が浸透していく。

アラガンは、アルツハイマー病に対して「Namzaric」を販売している。この分野ではアッヴィも、抗タウ抗体「ABBV-8E12」を開発中で、アラガンは、同薬の販売に先立って、営業チームの豊富な経験と組織的知見をアッヴィに提供するだろう。

眼疾患:安定した収益を期待

アラガンは、世界中で眼疾患のブランド薬を販売しているほか、緑内障や加齢黄斑変性、ドライアイ、老眼など、いくつかの適応症に対して開発品を複数持っている。

アラガンにとってもそうであったように、眼疾患領域はアッヴィに安定した収益をもたらすだろう。ただ、19年には米国でRestasisの独占販売権が失われる。眼疾患領域の将来は、20年に米国での発売が期待される加齢黄斑変性治療薬abicipar pegolと緑内障治療薬bimatoprost SRのような、新しい製品の成功に左右されるだろう。

 

「第2のヒュミラ」は現れるか

アラガンの後期パイプラインの製品化を成功させることができれば、アラガンの精神疾患、片頭痛、眼疾患の資産はアッヴィの最終損益に次々と収益を計上していくことだろう。

この収益は、ヒュミラのバイオシミラー参入によるアッヴィの損失を部分的に埋め合わせるとともに、パーキンソン病に対する抗α-シヌクレイン抗体(ABBV-0805)やABBV-8E12、elezanumabなど、斬新だが開発リスクの高い神経疾患治療薬候補物質の研究開発資金の調達を助けるでしょう。

これらが発売に至った場合、アンメットニーズが大きく、有病率が高いことを考えれば、とてつもない商業的成功を収めるだろう。アッヴィがアラガンのパイプラインに積極的に取り組めば、「第2のヒュミラ」が現れてもおかしくない。

(原文公開日:2019年7月2日)

CHECK!DRG発行の関連レポートは以下をご参照ください。

  • レポート1
  • レポート2

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この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。本記事の原文はこちらです。

出典:巨額買収はアッヴィに何をもたらすのか|DRG海外レポート

発行元:AnswersNews
発行日:2019/07/17

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