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【デジタルヘルス】デジタルヘルスは医療従事者の負担を増やすのか、減らすのか?製薬企業が考えるべきこととは?

【デジタルヘルス】デジタルヘルスは医療従事者の負担を増やすのか、減らすのか?製薬企業が考えるべきこととは?

「仕事は減るどころか増える可能性も」

デジタルヘルスと言って裕福な人が連想するのは、アドヒアランスの向上や患者負担のより少ない治療といった刺激的な可能性だろう。これに対し、貧困層や開発途上国、農村などの地域では、遠隔医療が医療そのものに大きな影響を及ぼすと考えられる。

WHO(世界保健機関)は、遠隔医療技術に注目しており、医療システムへの最適な導入方法を検討している。先月公表されたRecommendations on Digital Interventions for Health System Strengthening(医療システムの強化に向けたデジタル介入に関する推奨事項)という最新のガイドラインでは、世界の患者と医療提供者(HCP)が直面する問題と、それにモバイル医療のツールとサービスがどう影響するか、ということについて貴重な洞察を提供している。

WHOは遠隔医療ツールを、つぎはぎ状の医療システムを拡張する手段ととらえている。もう少し具体的に言うと、HCPが農村部やへき地でより効率的に働くことや、「職務の幅を広げるとともに、以前はより高いレベルの職員に割り当てられた職務に従事できるようになる」こと、を想定している。

Doctor typing on laptop computer while sitting at the glass desk in hospital office. Physician at work. Medicine and healthcare concept

医師の半数はEHRに満足していない

一方でWHOの研究者は、一部のHCPは「これら(遠隔医療技術)の介入で仕事量は減るどころか、増える場合もある」と警告している。実際、HCPのToDoリストはすでにびっしりと埋まっており、デジタル業務はさらなる負担になるというわけだ。使い勝手の悪さと、ほかのデジタルシステムとの一体化の遅れが、その要因となる。

EHR(電子医療記録)システムを使ったことのある人なら思い当たるだろう。昨年、われわれが米国の医師に調査したところ、EHRの使用が1日3時間を超える医師のうち、使い勝手や機能に満足している医師は半数に満たないことがわかった。さらに、3人に2人はEHR以外に情報を求めている。

米国のEHR市場は細分化されており、製薬企業が手を出すのは困難だ。しかし、ほかの市場なら製薬企業のツールが参入できる余地があるかもしれない。ブラジルの医師の53%は、患者教育やEHRに対する製薬企業の支援を期待している。中国でも、関心を寄せる医師は80%に上る。

懸念は「データの機密性」と「医師の自立性への影響」

WHOの報告書では、データ機密性と、医師の自律性に与える影響に対する不安を強調している。昨年のわれわれの調査でも、米国の医師のほぼ3人に2人は、音声検索の際のデータ機密性に対する不安を訴えた。また、米国の医師の43%は、AIや機械学習アプリケーションを意思決定支援に使えば、処方においてすでに制限のある医師の自律性が、時間とともにさらに抑制されると答えている。

Image photo

WHOの報告書では、デジタルヘルスのもう一つの活用例として、患者の継続的な把握や治療継続率向上のためにモバイル機器やアプリケーションを利用することが検討されている。

研究者は、センシティブな問題(性の健康)や偏見を持たれがちな疾患(HIVなど)に関して、患者にターゲット型のモバイルコミュニケーションを行う危険性を強調する一方、その可能性についても詳しく述べている。患者からは「メッセージは支援や手引き、情報を提供してくれ、方向性や安心感、そして治療への意欲を持たせてくれる」との声が上がっており、「モバイル機器の使用で、医療へのアクセスや、治療の一貫性・継続性が向上する」と評価する声や、「この方法で、自主性とセルフケアが向上した」という報告もあった。

患者は期待するが…

また、この報告書では、遠隔医療を「医療サービス供給の代替ではなく補完」と位置付けており、法的な曖昧さと、どのサービスの費用を誰が負担するのかという疑問を、部分的に反映している。

昨年のわれわれの調査では、米国の医師の5人に3人は遠隔医療に伴う責任問題を懸念しており、診療報酬の払い戻しに対する不安もほぼ同程度の医師が、遠隔診療のデータの機密性への不安は半数の医師が、それぞれ訴えた。彼らはこのDTC型の遠隔医療を別の視点でとらえており、54%が十分な標準治療を維持できなくなると危惧している。

もちろん、患者が同じような不安を抱くとは限らない。むしろ、バーチャル診察が提供する利便性の魅力をより感じるだろう。昨年のわれわれの患者調査によれば、ブラジルでは消費者の37%がすでにバーチャル診察を利用したことがあり、関心を持っている人は84%に上る。特に関心が高い分野は、セカンドオピニオン(66%が関心あり)、疾患管理(63%)、治療面談(62%)、そして緊急医療(61%)だった。

Doctor talking with a senior patient

デジタルヘルスに参入する製薬企業が考えるべきこと

処方用アプリケーションのチャンス

患者にとって、ひいてはそれを扱うHCPにとって、本当に付加価値をもたらすツールを開発可能なら、この分野には大きなチャンスがある。

われわれの2019年の調査では、米国の医師の44%が患者重視型アプリケーション(Pear Therapeuticsのオピオイド乱用患者向けreSET-Oなど)の処方に関心を抱いており、4%はすでに実施している。アプリケーションの処方を避けるHCPが最も危惧するのは患者が来院しないことであり、従来型医療にデジタル介入を組み込むにはこの点を踏まえる必要がある。

弱点となるデータの機密性と考えられる対応策

データの機密保持への懸念には、一部の有力なテック企業が取り組んでいる。アマゾンの音声アシスタント「アレクサ」はHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の承認を得た。それでもこの問題は、デジタル医療のツールやサービスの開発者にとって高い障壁だ。解決に取り組む企業は、患者データのロックダウンに対する投資、またはこれに対応済みのプラットフォームとの提携を覚悟すべきだろう。

HCPのワークストリームとのシームレスな調和が必須

WHOは、デジタルツールを患者の継続的把握とアドヒアランスの改善に使用するという展望には楽観的なようだ。しかしそれは、「これらの介入要素を一体となって実施できるよう、医療システムが支援できる場合」に限られる。実施によって新たな問題が発生したり、HCPに負担がかかったりするなら、それはソリューションとは言えない。

シンプルな自己報告ツールであれ、経時的データを記録するセンサー対応アプリケーションであれ、これらのツールは医療業界の動向を変えるだろう。ただしそれは、HCPに余計な手間をとらせることなく、ツールをEHRに接続できる場合に限られる。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

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